安倍派を立て直せるのは誰?「将来の首相」も狙える重要人物の名は?

自民党の最大派閥である清和政策研究会(安倍派)が親分を失い、右往左往している。集団指導体制への移行が苦肉の策であることは周知の通りだ。トップリーダーが決まらず、非常事態に陥っている最大派閥を立て直すことができるのは誰なのか。その人物の名前と、その人物が「将来の総理大臣」にもなれるとする根拠は何か。(イトモス総研所長・小倉健一)。
安倍晋三元首相を失った最大派閥・清和研の運命は?
 七奉行、五奉行、四天王……。常に権力闘争を特徴としてきた自民党の歴史は、内紛の歴史でもある。有力議員は絶対権力者を支え、手を取り合って権力を振るうが、今日の味方は明日の敵、それが「永田町の法則」である。
 史上最長の長期政権を築いたカリスマ・安倍晋三元首相の突然の失脚で、自民党最大派閥にはこの「掟」が浸透し、疑心暗鬼の空気が蔓延している。
 安倍首相が率いていた「清和政策研究会」(安倍派)は、トップの死去に伴い、有力者による集団指導体制で活動することを決定した。
 安倍氏が率いた清和政策研究会(安倍派)は、トップの死去に伴い、有力者の集団指導体制で運営することになった。いずれも組織全体を仕切る力やカリスマ性はない。
 安倍氏、自民党副総裁の麻生太郎氏とともに「3A」と呼ばれ、自民党の長期政権を支えた甘利明元幹事長。その甘利氏が7月20日、自民党最大派閥である清和研究会の現状について、メールマガジンで次のようにコメントした。
 最大派閥を揺るがす非常事態が起きている。清和研の有力5人でさえ「ポスト安倍」のポストを埋めることができず、集団指導体制を取らざるを得なくなっているのだ。以下、ダークホース候補の名前とその根拠を紹介する。
安倍首相は近年、政権に大きな影響を及ぼしてきた清和研の「数の力」に頼ってきた。
 安倍首相の祖父・岸信介元首相の血を引く福田赳夫氏が創設した清和研は、2000年の森喜朗内閣発足以来、自民党最大派閥としての力を背景に、小泉純一郎氏や安倍首相を輩出するなど、その中枢を担ってきた。
 それまでは、竹下登元首相が設立した竹下派に押さえつけられていた。しかし、2000年4月に小渕恵三首相が倒れると、森幹事長(当時)、青木幹雄官房長官、野中広務幹事長代理、亀井静香政調会長、村上正邦参議院議長ら「5人会」(いずれも当時の呼称)が開催された。森首相の後継者が事実上決定し、権力の空白を回避することができた。
 第6代首相の岸田文雄は、宮沢喜一以来、約30年ぶりの「公明党」政権を誕生させた。しかし、カリスマ的存在であった安倍元首相を失い、混迷する政局の中で、その「ジンクス」を打破できるかどうかは難しい。
 近年、首相が頼りにしてきたのは清和研究会の「数の力」である。昨秋に組閣した岸田首相も安倍首相と頻繁に会談し、内政から外交、安全保障に至るまで指南を受ける場面が目立っていた。最大派閥の意向を無視できなかったのは間違いない。
今後10年は安泰」と思われていた安倍派は、カリスマ性を失ったことで思わぬ非常事態に直面した。
 しかし、7月8日に安倍首相が射殺された今、バランスは急速に崩れつつある。
 清和研には、塩谷立元文部科学相と下村博文元政調会長の2人の会長代行のほか、世耕弘成参院議員会長、西村康稔元経済再生相、高木毅国会対策委員長(副会長)など5人の有力メンバーがいる。
 しかし、議論の余地のない「後継者」は見当たらず、内閣改造や自民党総裁選をめぐって気まずい雰囲気になることも少なくなかった。そうした不満を吸収し、スムーズに派閥をまとめ上げたのが、昨秋に復帰した安倍氏である。
 そのカリスマがいなくなったことで、不安は広がっている。